レンネットとは

前回のブログ「ゴゾチーズ作り」でお話しできなかった、凝乳酵素レンネットについてお話します。

乳のタンパク質に約80%含まれるガゼイン(その他のタンパク質はホエー:乳清)の、酸を加えると固まる働きを利用して、乳に酢や柑橘類などの酸を加えてカッテージチーズなどをつくることがあります。アジアでは、この酸凝固を利用してつくったチーズも多くみられます。

一方、西洋で多いのは、酵素をつかったチーズです。
凝乳酵素には、いちじくやパパイヤ等の植物由来のもの、カビ由来のもの、微生物を使ったものもありますが、元々多かったのは、レンネットを使用したものです。

レンネットは最近では凝乳酵素を指す名称のように使われ、チーズ輸入時の成分表でも、「レンネット(微生物由来)」、「レンネット(植物由来)」のように表記することもあります。
でもレンネットは本来、反芻類(食べたものを吐き戻し、噛み直して消化する、4つの胃を持った動物)の子どもの第4の胃(ギアラ)の消化液を使った凝乳酵素のことを指します。

第1~第3の胃には、乳を凝固させる胃酸が含まれないため、第4の胃を使うのです。
この第4の胃袋の消化液には、キモシンとペプシンという活性酵素が含まれていますが、このうち乳を凝固させるのはキモシンの方です。
哺乳時の子どもの胃のキモシンの量は約90%ほどですが、草を食べるようになる頃には、キモシンとペプシンの量が逆転します。ですから、キモシンが含まれている生後10~30日くらいの子どもの胃袋を、チーズ作りに使います。

反芻類の子どもの第4の胃の消化液を使うなんて、よく考えついたものだと思いますが、これは昔旅人が、砂漠で仔羊の胃袋に山羊乳を入れて持ち歩いていた際に、仔羊の胃袋の水筒の中でチーズができたことから、この製法が生まれたとも言われています。

その後、レンネットは仔牛の胃袋を使うことが多くなりました。
山羊や羊のレンネットも使われますが、牛に比べてピリッとした味になるそうです。

仔牛のレンネットも使うようにはなりましたが、反芻類の子どもの第4の胃袋というのは、数に限りがあります。(しかも、雌はミルクをつくるので、主に使われるのは雄です。)
そこで、この動物由来のレンネットによるチーズ作りは徐々に困難になり、代わりに微生物などが使われるようになりました。
さらに近年はBSEの問題もあり、現在は、カビや微生物、バイオキモシン(遺伝子組換え微生物酵素)の凝乳酵素が主流となり、動物由来のレンネットは世界でも全体の約1割くらいなのだそうです。

ところで、この微生物を使ったチーズ作りの技術には、日本人が貢献していたのです。
昭和33年に東京大学の教授に就任した有馬啓博士は、微生物の研究をする中で、キモシンの代替酵素ムコールレンニンを発見しました。
博士はそれ以外にも、ステロイドホルモンの原料を製造するための微生物変換法の開発や、抗かび抗生物質ピロールニトリンの発見もなさったのだそうです。
きっとチーズ作りのための研究ではなかったのでしょうが、チーズ安定供給の父ですね。有馬先生、ありがとうございます。

またまた寄り道のレンネット情報でしたが、マルタでもかつては動物由来のレンネットを使ってチーズをつくっていたのだそうです。今は、顆粒の微生物の凝乳酵素を、パラパラと入れていました。

この微生物の凝乳酵素、ひとつ注意点は、入れすぎると苦みが出るということです。その点だけ、ご注意ください。

yagi1.jpg


マルタ応援クリックありがとうございます

maltaste3のコピー
関連記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。